工場・事務所建設のコストダウンのポイント⑤
工法検討・設計の見直し

工法検討・設計の見直し

建築費の見積もり単価を比べることは大きなコストダウンには繋がらないことは単価比較に意味がない理由でお伝えしたとおりです。大きなコストダウンを可能にするのは「基礎、杭、地盤改良など最適な工法の選択する」ことです。

すでに建設プロジェクトが進んでいる際は一度最初に立ち返り、建物形状の変更、構造の再検討をすることで大きなコストダウンが可能になる場合があります。ここからは、実際に見積ドクターが携わったコストダウン事例を紹介します。

建築構造を見直して2億円のコストダウン

大型の倉庫案件事例を紹介します。この案件は予算が幾らということではなく、限りなく安く作ってもらいたい、という経営者のリクエストでした。そこで地元建設会社数社から概算見積を徴収しましたが、お客様の納得を得られる金額を提示してきた会社はありませんでした。

見積ドクターではワンチーム(お客様・設計事務所・建設会社)でコストダウン策を練るべきだと考えています。加えてインフレ気味の経済情勢下では建材の価格も不安定です。刻一刻と情勢が変わる中でも大きな額が動くのが建設プロジェクトです。金額が合わないからと更に他の建設会社を探して概算見積を徴集すると建設プロジェクト自体に遅れも発生してしまいます。

そこで概算見積を取った建設会社の中から精度の高い概算見積を行った建設会社1社を建設パートナーとして絞り込み、設計内容・工法を精査しながら建設プロジェクトを進めることにしました。

倉庫容量は変えずに鉄骨量を減らす

お客様の要望は4段積みのラックを並べることでした。そこで、ラックの棚数は変えずに全体的に4段積みを3段積みに変更することを提案しました。棚数は変えないので1段減らした分を同様に3段積みで横に並べることに。倉庫容量(棚数)は当初のお客様の希望をキープしたまま、建物の高さを少し下げて横幅を広げました。この変更により鉄骨量を当初のプランより減らすことができました。

この他にもVE案(Value Engineering(バリューエンジニアリング)の略。性能や価値を下げずにコストを抑えること。も織り混ぜ、結果的に約2億円のコストダウンができました。
建物の横幅を広げると将来の工場建設用地を圧迫するという問題はありましたが、お客様はコスト優先の選択をされました。

工法検討・設計の見直しは基本設計で行う

この事例のように抜本的に工法検討・設計の見直しができるのは建設プロジェクトの概算段階だからです。概算段階での設計は基本設計と呼ばれます。敷地に対する配置計画、建物の大きさ、間仕切りなどの大まかなレイアウトやどんな素材(タイルなのかクロスなのか塗装なのか、など)を使うのか、などを図面に落とし込んでいきます。

一方施工する際は、更に詳細な図面が必要になります。これは実施設計と呼ばれ、基本設計でつくられた図面のほか、さらに各部の詳細図、展開図、建具表、仕様書、構造図、などを作っていきます。 概算段階では基本設計なので図面の量は実施設計に比べて少ないため、プラン変更があっても作図・変更の作業量は少なくて済みます。お客様と建設会社だけで全て決め切り、実施設計図面を用意。そこから建設会社から見積徴集をしても予算オーバーだった際には工法検討・設計の見直しは図面変更作業に大幅な時間を要します。
図面を直している間は建設会社も再見積ができないのでタイムロスが生じ、建設プロジェクトの遅れに繋がります。

抜本的に工法・設計の見直しをすることは大きなコストダウンになることがありますが、検討するタイミングには注意が必要です。

工場・事務所建設のコストダウンのポイント① はじめに
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工場・事務所建設のコストダウンのポイント② 単価比較に意味がない理由
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工場・事務所建設のコストダウンのポイント③ 建設会社との調整能力 1
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工場・事務所建設のコストダウンのポイント ⑤工法検討・設計の見直し
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望月郁夫

1977年(昭和52年)に明治大学卒業、東急建設入社。
現場で雑用、経理処理、原価管理、資材発注などを7年、営業2年を経験。1986年(昭和61年)高弥建設入社(岩手県盛岡市)入社。東京支店立ち上げに従事し、1933年(平成5年)盛岡に転勤、1936年(平成8年)専務取締役営業本部長、2000年(平成12年年)代表取締役、2002年(平成14年)負債総額340億の民事再生申立。
以降10年かけて自力弁済。2018年には過去最高益を更新し退任。
同年5月ジュークアンリミテッド社を設立。
代表取締役会長、現在に至る。

民事再生や自力再生はそれだけでかなりの分量になるのでご興味のある方は別途ご連絡ください。