工場建設・事務所建設のコストダウンの障害となるのは、建設会社の積算、工事担当、営業、担当役員の自己保身です。全員が値段を下げてしまい社内で責任追求されないように硬いバリアーを張っています。
実はこの自己保身の積み重ねがコストアップの最大要因です。見積ドクターは建設会社出身なので、建設会社の内情がわかります。建設会社の様々な状況をヒアリングしながら丁寧にバリアーを一枚づつ剥がしながら調整を進め成果を出します。
もくじ
建設会社選定の際、過去にお付き合いのある建設会社を使いたい、というお客様は多いです。現建物を施工してくれたから会社のことをよく分かってくれている安心感があります。
しかし、このようなしがらみがコストアップになる場合があります。ここでは見積ドクターが手がけた倉庫建設のコストダウン事例を紹介します。
お客様から紹介されたA建設会社は地元で公共工事を主体とする建設会社です。見積ドクターでは当初から予算オーバーになると見込んでいました。
しかしA社は以前にお客様の工場を施工し、本業での取引もあり、無碍にすることはできません。A社の概算見積結果を待ってから、他社に見積依頼をするとロスタイムが生じ事業スケジュールに間に合いません。
そこで見積ドクターではお客様の了解を得て、B社にも見積依頼をしました。A社は公共工事中心。一方B社は民間工事が中心で郊外店舗など予算の厳しい案件を手がけています。売上は両社ともほぼ同じですが、B社の社員数はA社の半分です。社員数が多い=経費率も多くなりがちです。
見積結果は予想通り、本命だったA社はB社より20%高い見積で予算オーバーでした。同じ図面、同じ仕様で見積りしてこの結果です。
しかし取引先でもあるA社を切り捨てることは出来ません。そこでコストオン方式(発注者が特定の工事について専門工事業者を個別に選定した上で、発注者とその専門工事業者の間で取り決められた工事費に現場管理の経費を上乗せして元請会社に工事発注する方式。)でA社がB社に乗っかる形を提案しましたが、最終的にはA社がB社の価格に合わせることで決着しました。
建設会社の工事種別売上構成、経営内容などを分析するとどのような見積が出てくるかはある程度は予測できます。見積結果を見てから手を打つのではなく、あらかじめ結果を予想して準備しておくことが大事です。
そして、何となく話をしてみてから価格交渉するのではなく、具体的な根拠を持って交渉することで工事費は下がることがあります。
全国の建設会社は約47万社。全体のマーケットは63兆円規模です。民間工事の割合は62%、公共工事38%。建築・土木の割合にしてみると建築工事62.4%、土木工事37.6%。更に建築工事の内訳は民間住宅25%、非住宅(工場や事務所)17.9%、リフォーム10.2%です。
これだけ見ても「建設業」と一言で括るには多様であることが分かります。どの建設会社に工事を依頼すべきか。すでにこの時点でパートナー選びを間違えてしまっているケースがあります。見積ドクターが携わる民間非住宅(工場や事務所)の新築マーケットは約7兆円です。建築が得意で、更に民間住宅ではなく非住宅が得意な会社に依頼すべきです。
全国規模の大手建設会社は建築、土木ともに高い技術レベルにありますが、社員の給与水準も高く、全国の支店経費や一律の給与体系など地方建設会社と比較するとどうしても高いものになります。経費が価格に乗ってくるのはどの業界でも同じです。
また、地方エリアで継続的に工事を行なっているわけでもないので、それもコストアップの要因となっています。したがって価格面から考えると地方建設会社を選定した方がいいです。しかしここにも落とし穴があります。地方建設会社は土木工事から創業した会社が多いです。 建築で「100」と言うと100ミリですが、土木の「100」は100メートル。これは私たちの偏見かもしれませんが、土木工事を創業として事業規模の拡大に伴って建築をやるようになった建設会社と、もともと建築から始まった建設会社とでは技術の質に違いがあるように思います。DNAレベルでこだわりポイントが違う、と表現すればよいでしょうか。
それと土木工事主体の建設会社は公共工事への依存度が高くて、どうしても高コスト体質になりがちです。私たちが建設会社選定を行うときは「地方建設会社で建築工事が主力の会社」が理想的なパートナーとして探します。